Nishimoto労務クリニック

大阪市西区の社会保険労務士法人西本コンサルティングオフィスがご提供する労務問題に関するクリニックです。 労務相談のセカンドオピニオンとしてもお気軽にご利用いただけるような場にしたいと思っております。

雇用保険法

中長期的キャリア形成コースがキャリア形成助成金に創設されました。

この程、キャリア形成促進助成⾦(政策課題対応型訓練)に『中⻑期的キャリア形成コース』及びキャリアアップ助成⾦(人材育成コース)に『中⻑期的キャリア形成訓練』が創設されました。
これは、従業員の中⻑期的なキャリアアップを支援するため、厚生労働大臣が指定した講座(専門的・実践的な教育訓練)を従業員に受講させる事業主に対する⽀援として、受講経費の一部従業員の賃金の一部を助成金として支給する制度です。

具体的に対象となる訓練は、下記の教育訓練のうち、指定基準を満たしたものとして厚生労働大臣が指定した講座が対象となります。

●業務独占資格・名称独占資格の取得を訓練目標する養成施設の課程〔訓練期間は1年以上3年以内〕

業務独占資格

 助産師、看護師、准看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法⼠、作業療法⼠、視能訓練士、言語聴覚士、臨床⼯学技⼠、義肢装具⼠、救急救命⼠、⻭科衛⽣⼠、⻭科技⼯⼠、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師、柔道整復師、美容師、理容師、測量⼠、電気工事士、建築士、海技士、水先人、航空機操縦士、航空整備士

名称独占資格
 保健師、調理師、栄養⼠、介護福祉⼠、社会福祉⼠、精神保健福祉⼠、保育⼠、製菓衛生師

● 専門学校の職業実践専門課程〔訓練期間は2年〕
 専修学校の専⾨課程のうち、企業などとの連携により、最新の実務知識などを⾝に付けられるよう教育課程を編成したものとして文部科学大臣が認定したもの

● 専門職大学院〔訓練期間は2年または3年以内〕
 ⾼度専門職業人の養成を目的とした課程

指定された講座は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000058687.pdf

なお、助成額は賃金助成が一人1時間当たり800円、経費助成が訓練時間が100時間未満で15万円、100時間以上200時間未満で30万円、200時間以上で50万円が上限となっています。(但し、キャリア形成促進助成金は助成率2分の1、実際の経費額が上限となります)

留意事項として、この対象訓練を業務命令として受講させる場合は、訓練経費を従業員に一部でも負担させた場合は助成金の対象外になるようです。
また、従業員の自発的な受講希望により対象の訓練を受講した場合、訓練期間中に事業主が負担した従業員の賃金および経費が支給対象となるようです。

詳しくはパンフレットをご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/d01-1-1.pdf

起業準備中も「失業給付」が支給されることになります。

従来、起業準備中の離職者については、「自営業者」とみなし、雇用保険の失業等給付の内の「基本手当」は原則支給されないことが多かったことは、皆さん周知のことと思います。
このような起業の場合に雇用保険から受け取ることが期待できる給付は再就職手当程度に限定され、実際に起業準備中の無収入の時期に所得を補てんできるものは皆無でした。
しかし、今後は起業準備中の受給資格者についても、原則として支払うように運用を改めることになるようです。

サラリーマンが脱サラのために退職しても、急に現金収入が途絶えないようにして、起業を後押しすることを目的としているようです。

厚生労働省が、平成26年7月22日に、「求職活動中に創業の準備・検討をする場合」を基本手当の給付対象にすると通達が出したようで、早ければ7月末には起業準備中の方も基本手当の受給が出来るようになるかもしれません。

但し、①「事業許可の取得」や「事務所賃借の家賃交渉を始めた」という起業準備段階にあることと、②並行して求職活動もすることが給付の条件となります。
起業を準備するふりをして不正受給をしようとする人が出るのを防ぐのが主旨のようです。

やはり起業準備中の無収入状態や開業後間もなくの収入の不安定は、起業するという意欲を削ぐものですので、少しでも起業を目指す方の助けになれば意義のあるものと思いますね。

今後の運用改正がスムーズに進むことを期待したものです。

教育訓練給付金の拡充及び教育訓練支援給付金の創設

平成26年10月1日より、雇用保険法の「教育訓練給付金」制度が改正され、一部支給内容の拡充と新しい給付金が創設されることとなりました。

教育訓練給付金は、数年前に大幅に給付内容が縮小されたものですが、今回は拡充ということですので、拡充内容を少しご紹介したいと思います。

(1)「教育訓練給付金の拡充」について

これは従来「受講費用の2割を支給、給付上限10万円」であったものを、中長期的なキャリア形成を支援するため、専門的・実践的な教育訓練として厚生労働大臣が指定する講座を受ける場合に、支給内容を次の通り拡充するというものです。
給付律の引き上げ(受講費用の4割、年間上限32万円)
受講修了日から一年以内に資格取得等し、被保険者として雇用された又は雇用されている等の場合には20%を追加支給(合計60%、年間上限48万円)
●給付期間は原則2年(資格の取得につながる場合は最大3年)

【支給対象者】
●2年以上の被保険者期間を有する者(2回目以降に受ける場合は10年以上の被保険者期間が必要)

【拡充対象となる講座】
次の1~3の教育訓練のうち、受験率、合格率、就職・在職率などの指定基準を満たすものとして、厚生労働大臣が指定した講座(専門実践教育訓練)が対象となります。
(8月中旬から指定予定)

①業務独占資格・名称独占資格の取得を訓練目標とする養成施設の課程
(資格を持たずに業務を行うことが法令で禁止されている資格)
助産師、看護師、准看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、歯科衛生士、歯科技工士、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師、柔道整復師、美容師、理容師、測量士、電気工事士、建築士、海技士、水先人、操縦士、航空整備士
(資格がなくても業務を行うことはできるが、その名称の使用は法令で禁止されている資格) 
保健師、調理師、栄養士、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、保育士、製菓衛生師 等
②専門学校の職業実践専門課程[訓練期間は2年]
専修学校の専門課程のうち、企業などとの連携により、最新の実務知識などを身に付けられるよう教育課程を編成したものとして文部科学大臣が認定したもの
③専門職大学院[訓練期間は2年または3年以内]
高度専門職業人の養成を目的とした課程

(2)教育訓練支援給付金を創設

こちらは、45歳未満の離職者が上記の教育訓練を受講する場合に、訓練中に離職前賃金に基づき算出した額(基本手当の半額)を給付するという仕組みです。
こちらは、平成30年度までの暫定措置となっています。

厚生労働省作成の受給希望者向けリーフレットは次のリンクから→http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000047770.pdf

「あぶれ手当」を悪用した不正受給

新聞紙上で『雇用保険日雇労働求職者給付金』(いわゆる『あぶれ手当』)を悪用した大規模な不正受給事件があったことが報じられていました。

何でも、詐欺グループが、架空の建設会社を設立し、日雇い労働者(雇用保険の日雇労働被保険者)が職に就けなかった場合に国から支給される日雇労働求職者給付金(『あぶれ手当』)を不正受給していたとして、奈良県警に逮捕、起訴されたとのことです。
これには、あいりん地区(大阪市西成区)の日雇い労働者ら延べ約500人を抱き込んで、1億円を超える規模の給付金をだまし取っていたということでした。

一般の方は、日雇い労働者の雇用保険給付金というのがどういったものかというのを知る機会はないと思いますが、かなり優遇された制度となっているのです。

それがどのようなものか、簡単にご説明したいと思います。
『あぶれ手当』と呼ばれるその名のとおり、日雇い労働者が『その日』の仕事を探して求職活動をしたが仕事にあぶれて『その日』の賃金を得ることができなかった場合に手当が受けられるということで、俗に『あぶれ手当』と呼ばれるようになったのが『雇用保険日雇労働求職者給付金』なのです。
もちろん、日雇い労働者であるだけでこの給付金を受けることができるわけではありません。

受給するためには、その受給資格を得る必要があります。

この受給資格の要件とは、日雇労働被保険者が失業した場合において、その失業の日の属する月の前2月間に、その者について印紙保険料が通算して26日分以上納付されていることとなっています。
つまり、失業の認定を受ける日の属する月の前2か月間に日雇労働者として26日以上仕事をしていることが条件ということです。
これを証明するためには、日雇い労働者を雇用する事業主から『雇用保険印紙』を日雇労働被保険者手帳に貼付してもらい、これに事業主の届出印で割り印をしてもらうことが必要となります

『雇用保険印紙』と『日雇労働求職者給付金の日額』は、労働者の賃金により次のように3種類に分類されています。
①第1級印紙保険料:176円→支給額:日額7,500円
②第2級印紙保険料:146円→支給額:日額6,200円
③第3級印紙保険料:96円→支給額:日額4,100円

これを前2月間で26枚以上(最大44枚以上)貼付してもらうことによって、支給日数が13日分から17日分の給付金を受ける権利を得ることができるわけです。

計算すると最大の17日分を受給する場合には、127,500円を受給することができるのですが、雇用保険印紙の額は7,744円(176円×44日)しか掛からないという計算になります。
つまり、12万円足らずの額が『儲け』となるわけです。(あくまでも理論値ですが・・・)

今回の事件では、この制度を悪用し、実際には雇用されていないにもかかわらず、雇い入れたと架空の事業主が証明する(これは、日雇労働被保険者手帳に印紙を貼って割り印すれば済むことですから極めて簡単です。)ことで、この『儲け』をだまし取ったということのようです。
延べ500人の日雇い労働者には、2~3万円の小遣いを渡して協力者に仕立て上げたという訳でしょう。

もちろん国もこの制度が悪用されやすいということは、十分に分かっていますので、不正ができないよう管理体制を強化しています。
例えば、事業主が『雇用保険印紙』を購入する際には、『雇用保険印紙購入通帳』の提示が必要で、この通帳の交付を受けた者でなければ購入自体ができない決まりになっています。
また、印紙を転売した場合も処罰の対象になるという規定が定められています。

以上のように制度の脆弱性を補うために、日雇い労働者を使用する事業所の設立の場合にはそれなりに厳しいチェックが為されているものと思っておりましたが、今回の詐欺グループの場合は、その事業所の現地調査でも、これが架空事務所であるということを見破ることが出来なかったようです。

この制度を良く知っている分野の人間であれば、この『あぶれ手当』の不正受給方法は、かなり使い古された手口であることは常識だと思います。

しかし、実際の受給申請(失業の認定)の窓口では、雇用保険印紙が正しく貼付されている限り、支給を拒否できるものではありませんので、不正受給を見破ることは困難だったと思われます。

この詐欺事件は、雇用保険適用事業所として認定し、雇用保険印紙購入通帳を交付してしまったことについてのチェック体制が甘かったことに起因しているように思われますので、今後この種類の詐欺を防止するためには、チェック体制を厳しくすることは避けられないことと思われます。

また、この詐欺グループが、『架空事業所』の所轄公共職業安定所をあいりん地区を擁する大阪ではなく、奈良県の地方都市を選んだのもチェック体制の甘さを突いたものなのかもしれませんね。

雇用保険特定受給資格者の判断基準が改正されました。

雇用保険の失業等給付(基本手当)における特定受給資格者とは、倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた者に対し、所定給付日数を優遇する等の措置がなされるというものです。
平成26年4月1日より、この特定受給資格者の判断基準が改正されましたので、改正部分をご紹介したいと思います。

〇改正部分

Ⅱ-③
【改正前】
 賃金(退職手当を除く)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2か月以上となったこと等により離職した者。
【改正後】
 賃金(退職手当を除く)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2ヶ月以上となったこと、または離職の直前6ヶ月の間のいずれかに3ヶ月あったこと等により離職した者。

<改正のポイント>
改正前は、2か月以上連続で賃金の支払遅延があった場合になっていたが、改正後は離職前6か月間のいずれかに3月あった場合へと要件が緩和されました。

Ⅱ-⑤
【改正前】
 離職の直前3ヶ月間に連続して労働基準法に基づき定める時間(各月45時間)を超える時間外労働が行われたため、又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者。
【改正後】
 離職の直前6ヶ月間のうちに3月連続して45時間1月で100時間又は2~6月平均で80時間を超える時間外労働が行われたため又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者。

<改正のポイント>
改正前は、離職直前の3か月に連続して45時間を超える時間外労働に限定していたものを次の要件に緩和されました。
①離職直前の6か月のうちで3か月連続での45時間超の時間外労働
②離職直前の6か月のうちのいずれか1月で100時間超の時間外労働
③離職直前の6か月のうちのいずれか連続する2か月以上の期間で平均して80時間超の時間外労働

以上の2点が改正され、従来より「特定受給資格者」に認定される要件が緩和されました。

改正点が、「賃金の支払い遅延によるもの」「長時間労働によるもの」というのが、昨今の労働環境を象徴しているように思われますが、平成26年は「デフレ脱却」や「賃上げ気運」等により多少ですが経済状況が上向きになってきているようですので、この改正がそれほど適用されることが無かった改正に終わった方が良いのかもと思うところです。

【就業促進定着手当】が創設されました。

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平成26年4月より雇用保険の給付に新しいものが追加されます。
再就職後の賃金が、離職前の賃金より低い場合に給付が受けられる「就業促進定着手当」というものです。

支給対象者は、平成26年4月1日以降の再就職で、次の要件を満たしている方となります。
①再就職手当の支給を受けていること
②再就職の日から、同じ事業主に6か月以上、雇用保険の被保険者として雇用されていること
③所定の算出方法による再就職後6か月間の賃金の一日分の額が、離職前の賃金の日額を下回ること

支給額は、

『(離職前の賃金日額-再就職後6か月間の賃金の1日分の額)×再就職後6か月間の賃金の支払基礎となった日数』

となっており、再就職前の基本手当の支給残額の40%を上限に支給されるというものです。

なお、申請手続きは、「就業促進定着手当」の支給申請書が再就職後おおむね5か月後にハローワークより受給者本人に郵送されますので、再就職した日から6か月を経過した日の翌日から2か月以内に必要書類を添えて申請手続きを行うということになります。
また、この申請は、在職者を対象にしていますので、郵送での手続きも可としているようです。

なお、『再就職後6か月間の賃金の一日分の額』の計算方法は、次の通りです。

【月給の場合】
再就職後6か月間の賃金の合計額 ÷ 180

【日給・時給の場合】
次の①又は②のいずれか金額の高い方
①再就職後6か月間の賃金の合計額 ÷ 180
②(再就職後6か月間の賃金の合計額 ÷ 賃金支払いの基礎となった日数)×70%

※上記賃金額は、賃金締切日の途中での再就職の場合は、再就職後の最初の賃金締切日後の6か月間の賃金を対象とします。

手当の主旨としては、再就職手当を受けた受給資格者が、再離職して基本手当を受けた場合の財源を利用して、離職前の賃金額を再就職後の賃金額が下回った場合でも、離職前の手取りが確保されるようにすることで定着を図ろうとしているということと思われます。
今後、半年後から支給がされるようになりますがどれほどの効果が出てくるのか、少々興味のあるところですが、どういった形でこの評価が出てくるのか見ていきたいものです。

育児休業給付の支給率が引き上げられます。

平成26年4月1日以降に開始する育児休業から育児休業給付の支給率が引き上げられます。

具体的には、育児休業を開始してから180日目までは、休業開始前の賃金の67%となります。
これまでは全期間について休業j開始前の賃金の50%でしたので約半年間について17%の支給率アップとなります。

育児休業開始181日目からは、従来通り休業開始前の賃金の50%が支給されるということです。

ご存知の通り、健康保険の給付で「出産手当金」という給付がありますが、この給付が標準報酬日額の3分の2(およそ67%)ですので、この給付に合わせての引き上げになったようです。
但し、標準報酬日額と雇用保険の日額の算定方法では若干計算方法が異なりますので、全く同額というわけにはいかないと思いますが・・・

また、上記の支給期間中に賃金の支払いがある場合はその支払われた賃金の額が休業開始前の賃金日額に支給日数を乗じた額に対し、13%を超えるときは支給額が減額され、80%を超えるときは不支給となります。

なお、支給額には上限額と下限額が設定度されておりますが、この額は従来と変化はないようです。
因みに、上限額は213,450円、下限額は69,300円です。(平成26年7月31日までの額)

個人的には、出産手当金と支給率を合わせることにそれほど意味があるとは思いませんが、子育て期の家族を支援するという意味では少額でも支給額が増加することが好ましいこと御思いますので、こういった改正は、今後も積極的に実施して頂きたいと思います。

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