Nishimoto労務クリニック

大阪市西区の社会保険労務士法人西本コンサルティングオフィスがご提供する労務問題に関するクリニックです。 労務相談のセカンドオピニオンとしてもお気軽にご利用いただけるような場にしたいと思っております。

年金

「マクロ経済スライド」が初めて発動されます。

平成27年度、遂に「マクロ経済スライド」が発動されることになりそうです。
平成16年の法律成立から10年を経過して初めて適用されます。

マクロ経済スライドとは、公的年金の支給額の伸びを物価上昇よりも低く抑える仕組みですが、これまでの10年間適用されなかったのは、デフレ下において物価が上昇しない状況が続いていたのが原因です。
この程、平成26年度の通年での物価上昇が決定的となったことに伴い、マクロ経済スライドの発動が確実となったようです。

それでは、マクロ経済スライドとはどのような仕組みなのか、簡単にご紹介したいと思います。

この法改正は、平成16年に行われましたが、それまでの制度では、将来の保険料の見通しをにより、給付水準と当面の保険料負担をその都度法律により、決定していました。
しかし、少子高齢化が進むことにより、保険料水準の見通しは確実に上がり続けることとなり、国民の保険料負担がどこまで上昇するのかという懸念がありました。
 

そこで、この法改正で、将来の保険料負担が大きくなりすぎないよう、保険料水準の上限を設定し、そこまでの毎年度の保険料水準を法律で定めました。(平成29年までの保険料水準の上昇額が決定されたのがこれにあたります。)
同時に、国の負担割合(税額の投入割合)の引き上げと年金積立金の活用により、公的年金財政の収入額(税金と保険料等)を固定しました。

これにより、公的年の収入額が決定されたことにより、この収入の範囲内で給付を行うことが必要となり、「現役世代人口の変化」と「平均余命の伸びに伴う給付費の増加」というマクロでみた給付と負担の変動に応じて、給付水準を自動的に調整する仕組みを導入したのです。

この仕組みを「マクロ経済スライド」といいます。

①基本的な考え方
元来、公的年金額は、賃金や物価が上昇すると増加することを予定していましたが、一定期間(調整期間)中は、賃金や物価が上昇しても年金額はそれほどは増加させないことで、公的年金の財源の範囲内で給付を行い、長期的に公的年金の財政運営を維持していくことを基本しています。


②調整期間における年金額の調整の具体的な仕組み

調整期間中は、賃金や物価による年金額の伸びから、「スライド調整率」を差し引いて年金額を改定します。
「スライド調整率」は、「公的年金全体の被保険者の減少率の実績」と「平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)」で計算されます。
スライド調整率
③名目下限の設定
マクロ経済スライドによる調整は「名目額」を下回らない範囲で行うことになっています。

名目下限の設定の仕組みは下記の通りです。
マクロ経済スライドの下限
 

④調整期間中の所得代替率

マクロ経済スライドによる調整期間の間は、所得代替率(現役世代の所得額と年金による収入保障の代替率)は低下していきますが、調整期間が終了すると、所得代替率は原則一定となります。

マクロ経済スライドの自動調整と所得代替率
 
以上が「マクロ経済スライド」の仕組みになります。

来年度以降、財政検証期間の5年間は調整期間が続くこととなり、物価が上昇しても給付額は低く抑えられることとなることが予想されます。
物価が上昇する局面で、さらに消費税の増税等が予定されており、年金生活者の生活を圧迫することになるのではないかと懸念されるところです。

平成26年10月より社会保険の資格取得届の提出時の取扱が変更になります。

平成26年10月よりマイナンバー(個人番号)の導入に向けての取り組みの一環で、新規に基礎年⾦番号を付番する際に、住⺠票コードを収録するようです。
これに伴い、社会保険の資格取得時に基礎年金番号が確認できない場合は、資格取得届に住民票上の住所の記載が必要となります。

『基礎年金番号の確認ができない場合』の取扱

①運転免許証等により本人確認を実施する。
②住民票の住所以外に郵便物の届く住所があるかどうか?
  ㋐ある場合→被保険者住所欄に『郵便物が届く住所』を記入し、備考欄に『住民票上の住所』を記入
  ㋑ない場合→被保険者住所欄に『住民票上の住所』を記入
③『資格取得届』と『年⾦⼿帳再交付申請書』を併せて提出する。

以上の通り、基礎年金番号が不明の場合は住民票上の住所が必要となり、日本年金機構で本人確認が出来ない場合は、資格取得届が返却されることもあるようです。

また、外国人の社会保険資格取得届の手続きでも10月より取扱の変更があります。

先般より外国籍の方の資格取得の場合、アルファベット氏名(変更)届の提出が任意となっていましたが、10月より原則全員提出に変更となります。

10月以降の外国籍の従業員の資格取得に際しては、在留カード等の確認を併せて行うようにした方が今後はよさそうです。

詳しくは、日本年金機構の案内をご参照ください。
住民票上の住所確認→
http://www.nenkin.go.jp/n/data/service/00000220970MxGWNHhs4.pdf
外国籍のアルファベット氏名届→http://www.nenkin.go.jp/n/data/service/0000022096zuAGXZpmGD.pdf

平成26年9月分から厚生年金保険料率が変わります

平成16年の法改正により厚生年金保険の保険料率が毎年改定(値上げ)され、平成29年9月まで上がり続けることは皆さんご承知の通りと思います。

今年もその改定時期が近づき、改定保険料率が決定されましたのでご案内いたします。

平成26年9月分(10月末納付期限分)から平成27年8月分(同年9月末納付期限分)までの厚生年金保険料率は次の通りです。

●一般の被保険者  現行:17.120% → 変更後:17.474%

●坑内員、船員    現行:17.440% → 変更後:17.688%

上記は事業主と被保険者の双方が負担する合計の料率ですので、被保険者(労働者)はこの半額8.737%の負担となり0.177%の負担増ということになります。

分かっていることではありますが、毎年ちょっと嫌な季節ですね。

※ご参考までに、等級毎の保険料額表のリンクを添付しますので、詳しい保険料額はこちらをご参照ください。→http://www.nenkin.go.jp/n/data/service/00000212326QlC7K0yfd.pdf

「厚生年金加入逃れ対策」実行へ?

この程、政府は厚生年金に加入していない中小零細企業80万社を来年度(平成27年度)から特定し、加入させる方針を打ち出したようです。

国税庁が保有する所得税の源泉徴収している事業所に関するデータを年金機構に提供することにより、従業員の源泉徴収・納税処理を実施している事業所でありながら厚生年金保険の事業所としての適用をしていない事業所を特定するということになりそうです。

この方法は以前から議論されていた方法ですが、政府がいよいよ重い腰を上げたかなという印象を受けました。

国税庁の保有する所得税を納付している企業・事業所データは全国で250万か所あるようですが、厚生年金保険の保険料を納付している事業所の数は170万か所ですので、その差額80万か所が加入逃れをしている事業所ということになると見ているということのようです。

日本年金機構も従来から未加入企業への加入勧奨の取り組みを続けてきましたし、最近この活動に力を入れているという印象も受けますが、実際には加入逃れをしている企業・事業所への加入促進というのは困難な作業というのは容易に想像ができます。
これが、来年度以降は、法人企業でありながら税金は払っているのに社会保険料は支払っていないという裏付けを持って加入勧奨ができるというのが強みになり、より効率的な活動が展開できると予想できますね。

社労士の立場でこの記事を読んで、以前から厚生年金保険の調査などで厚生年金保険の適用企業・事業所に対しては定期的且つ厳しく資格取得等の調査を実施しているのに、本来加入すべき事業所でありながら適用していない適用逃れの企業に対する加入促進の作業は遅れているということで、少々不公平感を感じていましたので、今後厚生年金保険の事業が、より公平なものになることを期待したいと思います。

社会保険料の滞納から差押え処分について

最近、社会保険料の滞納に対して、差押え処分になる事業所が増加しているように感じます。
実際に身近な所でも差押えの警告の通知や実際に差押えが行われたという事例を目の当たりにしていて、かなり増加しているのかなと思っておりました。
少々興味があったので、日本年金機構の「平成24年度業務実績報告書」なるものをのぞいてみたところ、確かに差押えが増加しており、平成24年度の差押え事業所数は22,556件となっており、前年の17,798件に対して5,000件弱も増加していました。

平成24年度末の滞納事業所数が179,106件とのことですので、滞納事業所数に差押え事業所数を加算するとおよそ20万件になりますので、滞納事業所の1割以上の事業所が差押え処分を受けているという計算になります。

更に恐ろしいことに、滞納処分の「国税庁委任」という仕組みがありますが、平成24年度までは適用された事業所はありませんでしたが、平成25年5月には3件が国税庁委任の対象となり、その後はまだ公表されていませんが推して知るべしかなと思います。

皆さまの事業所がこのような事態に陥ってはいけないのですが、一般常識として「社会保険料の滞納から差押えまでの流れ」を少し説明したいと思います。

1.保険料の徴収
 社会保険料は、賦課月の翌月末が納付期限となっており、口座振替又は納入告知書にて納付する仕組みとなっています。

2.納付期限までに納付がされないとき
 電話や文書による年金事務所来所を求め、又は年金事務所職員が事業所を訪問し、納付督励を行い、早期の完納をすすめます。

3.督促
 社会保険料を納付期限までに納付されない事業所に対しては、督促状を送付するとともに、電話等による納付督励が行われます。
 督促状で指定した期限までに完納されない場合は、滞納保険料等を回収するための「滞納処分」に突入します。
 この時、各々の事業所の事情によっては、分割納付による完納を認めたり、早期の完納を約束される場合は指定期限を過ぎても「滞納処分」は猶予される場合もあります。

4.滞納処分の流れ
 納付督励によっても、完納のめどが立たない場合は、財産調査を行い、必要に応じて「滞納処分」が行われます。この際、滞納額が高額でかつ悪質な滞納事業所については「国税庁委任」という仕組みがあります。

上記は、日本年金機構のホームページにアップされている同機構としての「滞納整理」の取組について公表されている記事からの抜粋ですが、公然と「滞納処分」の仕組みが案内されているのが、滞納事業所の多さを物語っているのでしょうね。

と、ここまで、つらつらと滞納処分について書いてきましたが、実際に督促状が届いたときにどのように対応すべきなのでしょうか?

何もせずにそのまま放置なんてするととんでもないことになります。
日本年金機構ホームページに記載されているように、「納付計画」を合意することによって、分割納付が認められたり、納付猶予をしてくれたりもします。
先ずは年金事務所で相談するのが第一歩と言えるかもしれません。

しかし、納付計画の相談もせず、督促状も放置したままだったらどういうことが起こるかというと、早ければ督促状送付から約10日後、「財産調査」が行われることになります。

「財産調査」では、滞納事業所の取引先金融機関の預金残高、保有している債権、取引先の売掛金、不動産等を含めた全財産が調査対象になります。
先ず、調査は任意で行われますが、財産の確認ができなかったな場合は、強制的な捜索の段階に進みます。
捜索によって「滞納処分」に充当できる財産が見つかれば「差し押さえ処分」が執行されます。

この対象となる財産は、主に「現金」「預金」「不動産」「有価証券」、そして「売掛金」等が挙げられます。
特に「売掛金」の調査では、滞納事業所の全ての得意先に文書等でにより売掛金の額、決済日等の調査依頼が送付されます。
この回答を受けて、実際に差し押さえの決定通知が滞納事業所に通知されることとなります。

つまり、財産調査や捜索のフェーズに移ると得意先等に日本年金機構から差し押さえの準備をしていますよというような通知が出されるということになります。
当然、信用問題にもつながりますので、本業への影響も多大なものになるのは、想像に難くないと思います。

差し押さえ処分は、「滞納者が督促状の送付を受けても支払う意思を示さない場合」に行われます。
因みにその判断がなされるのは督促状の送付から約10日後となります。
すなわち、督促状の送付から10日以降ならば差し押さえを執行できると思った方がよいということになります。

実際に差し押さえというフェーズまで至った場合、企業としての存続の問題となりますので、このような事態を免れるためにも、督促状が届いた段階で今後の支払いの予定等の説明および相談に行くことをお勧めします。

もちろん、督促状が届かないことが一番良いことですがね。

未払い年金の支払命令判決

5月30日の朝刊に国に対し未払い年金の支払い命令が出たという記事がありました。
判決は、大阪地裁田中健治裁判長により下されたものですが、なかなか興味深い判決というのが第一印象でした。

事件の概要は、次の通りです。

原告女性の夫(当時31歳)は兵庫県の工具製造会社に勤めていた1981年に死去。その後1985年以降に明石社会保険事務所(現・明石年金事務所)などに10回ほど夫の年金記録を照会したが、「記録がない」と門前払い状態であったようです。
それが2009年に自身の年金相談のために社会保険事務所を訪れた際に夫の年金記録が見つかったというのです。
これを受けて、遺族年金の支給を申請したが、社会保険庁(現・日本年金機構)は2004年3月分以前は会計法上の時効(5年)に当たるとして支給を決定することはなかった。

原告女性は、社会保険庁が年金記録を発見出来なかったために遺族年金の支給が遅れたのに、時効を理由に5年分しか支給しないことは不当として、残り23年分も支払うよう求めたというのが本件訴訟の概要となります。

判決では、「年金記録の発見が遅れたのは社会保険事務所の違法な取り扱いが原因で、時効の主張は許されない」として国に対し、未払い年金約2,200万円の支払いを命じています。

少々、違和感を感じたのが、かつて原告女性が、遺族年金の相談で明石社会保険事務所を訪れた際になぜ夫の年金記録がみつからないということになったのか?という点です。
新聞報道ではあまり詳しくは記載されていませんでしたが、判決では「社会保険事務所の違法な取り扱いが原因で年金記録の発見が遅れた」と断じています。
本件のケースでは、原告女性の夫は死亡当時会社員であったように思われますので、厚生年金保険の被保険者であったと推定されます。
そうであれば、年金記録が最初の相談で発見されなかったことが不可思議と思われてなりません。
もっと高齢者の老齢年金の相談事であれば、記録が欠損しているとしても不思議はないのですが、30台前半くらいの遺族年金の年金記録が欠損しているというのはいかにも不自然極まりないと思います。

判決で、原告女性の主張が認められたのは極めて喜ばしいことですが、本件事件の源流である30数年前の社会保険事務所と社会保険庁の対応に違法行為があり、その隠蔽をはかり記録を意図的に消したのではないかと穿った見方をしてしまうのも事実です。

最近あまり話題に登りませんが、『消えた年金問題』の調査は、まだまだ道半ばと聞きます。
実際には、本件訴訟のように消された年金記録によって本来受けるべき年金が受給できずに苦しんでいる人がいるかもしれないと改めて思ったところです。

公的年金制度の見直し案について

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先日、新聞紙上に厚生労働省が公的年金制度の見直しに入ったという記事が掲載されていました。

具体的な検討内容としては次のとおりです。
①国民年金保険料の納付期間を5年延長し原則65歳までとすること。
②厚生年金保険に加入するパート労働者を増やすこと。
③人口動態の変化に合わせて自動的に年金給付額を減らせるよう調整できるようにすること。

以上のようなことが掲載されていましたが、この検討は5年に一度実施することが定められている公的年金の財政検証作業の一環とのことでした。
この検討は平成26年内に改革案をまとめ、来年(平成27年)の通常国会への改正法案の提出を目指すということでした。
政府はこのほど消費税の税率アップにより社会保障財源の確保に一定の道筋を付けましたが、年金財政はなお厳しく平成24年度の収支では、収入総額43兆円に対して支出総額50兆円と約7兆円の赤字となっているそうです。
まだまだ積立金を取り崩して赤字の穴埋めをしている構造に変化は見られないということですので、この検討も致し方ないのかもしれません。

具体的なそれぞれの内容は、
①国民年金保険料の納付期間を65歳までとすること
 延長期間は原則5年とするが、いつまで納付するかはそれぞれの加入者が選択できるようにする。現在、厚生年金の受給開始年齢は引き上げている最中で男性平成37年、女性平成42年に引き上げが完了する。このスケジュールに合わせて納付期間を65歳に伸ばすという案のようです。
②厚生年金保険に加入するパートを増やすこと
 パート労働者の被保険者の加入要件は、週の労働時間が常勤者の概ね4分の3以上の場合となっていますが、先日の改正で従業員が501人以上の大企業について平成16年10月から週20時間以上、月収8.8万円(年収106万円)以上のパート労働者は加入要件を満たすことになります。
 今回の改正案では、中小企業も加入対象に加え、月収要件も5~6万円以上とすることで300万人の加入を目指すとしています。

公的年金制度の破たんが懸念されている状況下でこういった検討を進めることは当然と思いますが、どの検討項目を見ても、簡単には進まないように思われます。
国民年金保険料の納付期間の延長というのもよくわかりますが、実際には若い人の納付率が高まらない状況にあり、納付期間年数だけ延長することで解決できる問題ではないように思います。
また、パート労働者の加入要件の緩和については、一部業種の企業に相当多大な負担を強いることになりますので、抵抗は大きいと思われますし、パート労働者側も旦那の扶養範囲でパート収入を稼ぐという方々が多く、抵抗感は大きいのではないかと思われます。

年金制度の改革は必須ですが、この記事を読んで、付け焼刃の改革では根本的な解決には結びつかないのでは・・・
今後の検討状況に注目してまいりたいと思います。

産前産後休業期間中の保険料免除が始まります。

厚生年金保険及び健康保険の保険料免除制度に「産前産後期間」が追加されます。

既にご存知の方も多いと思いますが、平成24年8月の法改正により、従来から保険料免除されていた「育児休業期間中の免除」に追加して、「産前産後期間」も保険料免除となることが決定されておりましたが、施行の時期が未定となっていました。

この程、この時期が決定され発表されましたので、ご紹介させて頂きます。

〇産前産後期間中の保険料免除

平成26年4月30日以降に産前産後休業が終了となる方(但し、平成26年4月以降の保険料について)が対象となります。
・具体的には、産前産後休業期間中産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠又は出産を理由に労務に就かなかった期間)の保険料が免除されます。
・但し、平成26年4月以降に発生する保険料に限られます。

つまり、平成26年4月30日以降に産後休業が終了する方ということになりますので、平成26年3月5日以降に出産された方が対象となります。
なお、産前産後休業期間の長さは、出産日により変動しますので、年金事務所への届出は「出産前」にするのと「出産後」にするのとでは、少々手続きの方法が異なります。

「出産前」の届出の場合
(1)出産予定日の前又は後に出産した場合
 ①産前休業開始後に「産前産後休業取得者申出書」を提出
 ②出産後に「産前産後休業取得者変更(終了)届」を提出
(2)出産予定日に出産した場合
 産前休業開始後に「産前産後休業取得者申出書」を提出するのみで、予定通りに出産した場合は、「産前産後休業取得者変更(終了)届」の提出は不要となります。

 上記(1)は、出産予定日に出産されない場合、出産日によって「産前休業期間」の長さが変動することになるため、「終了の届出」が必要となるということです。
 つまり、出産予定日より早く出産した方は産前期間が短くなり、遅れた方は長くなるということになりますので、終了日が届出なしでは把握できないということになります。
 それに対し、出産予定日通りに出産した方は自動的に98日で産前産後期間が終了するため、終了届が扶養ということになります。

「出産後」の届出の場合
 出産後に「産前産後休業取得者申出書」を提出(出産予定日と出産日の両方を申出)するだけで手続き終了となります。

なお、労働基準法の規定上、ほとんどありえないと思いますが、産休終了予定日前に産休を終了した場合は、「産前産後休業取得者変更(終了)届」により終了日を届け出ることとなっております。
また、大多数の方は、産前産後休業終了後、育児休業に突入し、そのまま保険料免除が継続されるということになると思いますので、実務上は「育児休業取得者申出書」の届出ということになると思います。

なお、詳しくは、日本年金機構のホームページをご確認ください。
http://www.nenkin.go.jp/n/data/service/000001674194EWe5gfHi.pdf

再婚したら「加給年金」はもらえるの?

皆さんは、老齢厚生年金等に「加給年金」という給付があることをご存知でしょうか?

「加給年金」とは、老齢厚生年金の受給権者が受給権を取得した時に65歳未満の妻や18歳未満のこどもを扶養しているときに一定額が老齢厚生年金に加算される仕組みで、この上乗せ部分を「加給年金」と言います。これは、元々サラリーマンの妻が老齢年金を受けることが出来ないケースが多かったため、これを補う意味で設けられたもので、扶養手当的な意味合いが強いものです。

因みに、「加給年金」の受給資格・受給要件は次のようになっています。

【特別支給の老齢厚生年金(定額部分を受け取っている場合)、または65歳以上の老齢厚生年金の受給者で、厚生年金保険の被保険者期間が240月以上の場合に、生計を維持している配偶者または子がいるときは加給年金額が加算されます。】

【生計を維持している配偶者又は子の要件】
 ①配偶者は65歳未満、子どもは18歳(障害者は20歳)になって最初の3月31日までの間
 ②配偶者や子どもそれぞれの年収が850万円未満であること
 ③配偶者の厚生年金加入期間が20年未満であること

【加給年金の支給開始の事由(例)】
 ①60歳時点で厚生年金被保険者期間が240月を満たしているとき
 ②60歳から老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢までに退職して240月を満たしたとき
 ③定額部分の支給開始後から65歳までに退職して240月を満たしたとき
 ④65歳時点で240月を満たしたとき
 ⑤65歳以上70歳未満の間に退職して240月を満たしたとき
 ⑥70歳到達時に240月をみたしたとき

以上が一般的な「加給年金」の受給要件となりますが、従来受けていた「加給年金」が停止するケースがあります。
主な停止事由は次のようなものがあります。
 ①配偶者が65歳、子が18歳に到達した
 ②配偶者の厚生年金加入期間が20年に到達した
 ③配偶者と離婚した
等々

この停止事由の例で「離婚」というのがありますが、先日逆のケースで年金受給者が結婚した場合に「加給年金」の受給が開始できるのかという質問がありました。
(この方は60歳で年金を受給し始めたころは結婚されていたので加給年金を受給していたのですが、その後離婚して加給年金が不支給となった方でした。)

結論としては、既に年金を受給している場合、新たに「加給年金」を受給できるケースは皆無(たぶんあり得ない)と思われます。

つまり、上記の【加給年金の支給開始の事由(例)】にある通り、60歳以上で加給年金が支給開始になるケースはすべて、その時点より後に厚生年金加入期間が240月を満たした場合となっており、既に年金受給権を持っている方の場合、240月を既に満たしているので、そのケースにはなりえないということとなります。

逆に若いときにサボっていて厚生年金の加入期間が少ない方が65歳を過ぎて結婚(又は再婚)をして、その後に240月を満たした場合、そこから老齢厚生年金の受給と加給年金額の加算がされるということになります。

今回の質問で改めて「加給年金」というものを再確認した結果、少々制度の違和感を感じる結果となりました。

近年ますます晩婚が多くなっていると思いますが、同じように65歳を過ぎてから若い奥さんと結婚した場合に、厚生年金保険料を多く払った人(長く加入した人)に加給年金という扶養手当が支給されず、あまり多くの保険料を払っていない人(加入期間が短い人)に扶養手当付の老齢厚生年金が支給されるというのは、少々不公平な感じがするなと思った次第です。
皆さんはどのように思われますか?

※本ブログの「加給年金」受給要件等については、一部要件(期間特例等)を省略しておりますので、予めご了承下さい。

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