Nishimoto労務クリニック

大阪市西区の社会保険労務士法人西本コンサルティングオフィスがご提供する労務問題に関するクリニックです。 労務相談のセカンドオピニオンとしてもお気軽にご利用いただけるような場にしたいと思っております。

労働者災害補償保険法

アスベスト被害 最高裁判決で国の責任を認める!

平成26年10月9日最高裁において、大阪・泉南地域のアスベスト訴訟の上告審判決がありました。 

判決では、「石綿の危険性が明らかになった1958年以降、事業者に排気装置の設置を1971年まで義務づけなかったのは著しく合理性を欠き、違法だ」と国の不作為を指摘。
原告に対する国の賠償責任を認めたものでした。

裁判官5人全員一致の意見で、国の認定分だけで死者12,000人を超える石綿被害を巡り、最高裁が国の責任を認めたのは初めて。生命を脅かす重大な被害が生じかねない場合には規制の遅れを許さないという、最高裁の厳格な姿勢が示された形です。

今後のアスベスト被害対応に重大な影響を与える可能性のある判決で政府の対応等にも注目して行きたいと思います。
ところで、良い機会ですので、現行制度上のアスベスト救済法である「特別遺族給付金」制度の給付内容をご紹介したいと思います。

1.救済対象者

 労働者又は労災特別加入者であってアスベストに曝露する業務に従事することにより、指定疾病等(※)に罹患し、これにより死亡した者(昭和22年9月日以降に指定疾病等に罹患し、平成28年3月26日までに死亡した方)の遺族であって、時効(死亡日の翌日から5年)により労災保険法に基づく遺族補償給付の支給を受ける権利が消滅した者

※ 指定疾病とは
  中皮腫、気管支又は肺の悪性新生物(肺がん)、石綿肺、びまん性胸膜肥厚及び良性石綿胸水を指します。

2.救済内容


●特別遺族年金
1.受給者
 配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって次の要件にいずれにも該当する方
 (1)死亡労働者等の死亡の当時その収入によって生計を維持していたこと
 (2)妻(事実婚を含む)以外の方については、死亡労働者等の死亡の当時において、次のアからエまでに該当すること

  ア. 夫(事実婚を含む。以下同じ。)、父母又は祖父母については、55歳以上であること
  イ. 子又は孫については、18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にあること
  ウ. 兄弟姉妹については、18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にあること又は55歳以上であること
  エ. アからウまでの要件に該当しない夫、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹については、厚生労働省令で定める障害の状態にあること 
 (3)死亡労働者等の死亡の時から施行日(平成23年8月30日)までの間において、次のアからオまでのいずれにも該当しないこと

  ア. 婚姻(事実婚を含む)をしたこと。
  イ. 直系血族又は直系姻族以外の方の養子(事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含む)となったこと
  ウ. 離縁によって、死亡労働者等との親族関係が終了したこと。
  エ. 子、孫又は兄弟姉妹については、18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したこと(死亡労働者等の死亡の時から引き続き(2)エの厚生労働省令で定める障害の状態にあるときを除く。)
  オ. (2)エの厚生労働省令で定める障害の状態にある夫、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、その事情がなくなったこと(夫、父母又は祖父母については、死亡労働者等の死亡の当時55歳以上であったとき、子又は孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるとき、兄弟姉妹については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか又は死亡労働者等の死亡の当時55歳以上であったときを除く。) 

 

2.支給額
 支給額は、遺族の人数に応じて以下のとおりです。
  1人:年240万円
  2人:年270万円
  3人:年300万円
  4人以上:年330万円


●特別遺族一時金

1.受給者
 (1)特別遺族一時金は、次の場合に支給されます

  ア. 施行日(平成23年3月27日)において、特別遺族年金の受給権者がいないとき
  イ. 特別遺族年金の受給権者がいなくなった場合で、それまでに支給された特別遺族年金の額が、アの場合に支給されることとなる特別遺族一時金の額未満のとき。  
 (2)特別遺族一時金を受けることができる遺族は、以下のとおり

  ア. 配偶者
  イ. 死亡労働者等の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子、父母、孫及び祖父母
  ウ. ア・イに該当しない子、父母、孫及び祖父母並びに兄弟姉妹 
  

2.支給額
 支給額は、以下のとおりそれぞれ支給されます。
  (1)アの場合:1,200万円
  (1)イの場合:1,200万円からすでに支給された特別遺族年金の合計額を差し引いた差額

もちろん上記救済対象者に含まれない死亡5年以内(時効完成前)の労働者の遺族については、通常の労災保険法に基づく遺族補償給付の支給対象となります。
以上ご参考までに

退職後の『うつ自殺』に労災認定 東京・新宿労基署

この程、東京都のアニメ制作会社に勤めていて、辞めた後の2010年10月に自殺した男性(当時28歳)について、新宿労働基準監督署が過労によるうつ病が原因として労災認定していたことが、遺族側の弁護士により公表されました。

弁護士によると、男性は正社員として2006年から2009年まで勤務し、通院していた医療機関のカルテには「月600時間労働」といった記載があったとのことです。
このアニメ制作会社にはタイムカードによる労働時間管理といった仕組みは導入していなかったようです。

労基署は、時期を不明としつつも男性は在職中にうつ病を発症し、その前の2~4か月に少なくとも100時間を超える残業があったと認定したしたとのことでした。

最近の『精神障害の労災認定』の基準として、出来事としての長時間労働】では、発病前1~3か月の長時間労働を出来事として評価することがあります。
この場合の「強」に評価される例としては、
・発病直前の2か月連続して1ケ月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行った場合。
・発病直前の3か月連続して1ケ月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行った場合。

が挙げられています。

この基準からすると、この男性のケースでは、時期を不明としながらも、うつ病発症前の2~4か月に少なくとも100時間超の残業としているところが、上記の『発病直前の概ね100時間以上の時間外労働』に該当すると推定したのかもしれません。

確かに今回のケースでは、弁護士推定の発症時期までの半年間の残業時間は月134時間~344時間に上ったということですので、この推定は適当と思われますが、労基署が時期を不明としながらも、労災を認定したということに少なからず衝撃を受けました。

従来、『精神障害の労災認定』を受けるためには、膨大な証拠を認定を請求する側が用意することが必要と思われてきたため、発症時期が不明確な状態で認定されたということが、驚きでもあり、恐ろしいかなとも思われました。
ましてや労働者が退職してから3年以上も経過してからの認定には驚きがありました。

将来的には、もっと精神障害労災認定が身近なものとなることが予想されますので、うつ病で退職した社員や遺族から突然「労働環境に対する事業主の安全配慮義務違反」として訴訟を起こされることもあるかもしれないと思った次第です。

余談ですが、この事件でのアニメ制作会社ではタイムカードによる労働時間管理の仕組みを導入していなかったようですが、労働時間管理につい、平成12年の『労働時間の適正把握基準』というものがあり、労働者の労働時間を適正に把握する義務が事業主にはありますのでその点からも問題はあるかなと思われます。

中小事業主等の「特別加入」制度とは。

皆さまご存じのとおり、労働者災害補償保険(労災保険)とは、「労働者」の業務上及び通勤途上の災害を補償する保険です。
この労災保険の保険料は、「労働者」を雇用している「事業主」が全額負担しています。
もちろん、労災保険が存在しなければ、業務上の災害は「事業主」が補償することになりますので、保険料を負担するのは当然のこととなりますが、当の「事業主」は「労働者」に当たらないので業務上の事故で事業主本人が負傷しても、労災保険の保険給付を受けることはできません。
少々、気の毒な感じがするのは、わたくしだけではないと思います。
(かくいうわたくしも事業主の端くれですので同じように労災保険は利用できません。)

事業主(社長や役員など)には、「労働者」にあるような公的補償は一切ありませんので、少々高額な保険料を支払って、民間保険会社の生命保険などを頼っている方が大勢いらっしゃると思います。
もちろん、生命保険や傷害保険を利用して、補償制度を自ら準備することはとても大事ですし、社長や役員にとっては必需品と言えますが、一定の要件に該当すると事業主も「労災保険」に加入することができます。
これが、中小事業主等の「特別加入」制度です。

加入出来る事業主の要件は、概ね次のとおりです。
①業種別に定められた要件を満たす中小事業主(従業員300人以下(金融・保険・不動産・小売業は50人以下、卸売・サービス業は100人以下))であること
②労働者を年間を通して1人以上使用していること
労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託していること

万が一の事故の際、「特別加入」することによってどのような補償が受けられるのかというと、一部の補償を除いて、「労働者」の補償と全く同じ補償が受けられることになります。
療養費用は全額自己負担が不要となり、万が一の死亡事故や後遺症が残るような障害の場合は、遺族年金や障害年金が受けられることとなります。
但し、労災事故と認定された場合に限られますが・・・

これだけの補償ですから、保険料が高いと思っていらっしゃる方が多いと思いますが、なかなかリーズナブルな負担でこの補償を受けることができます。
例えば、卸売業の社長が、給付基礎日額2万円(月額報酬60万円相当)で特別加入した場合、年間保険料25,550円労働保険事務組合の委託手数料(組合と企業の規模によって金額は異なりますが月額1万円から2万円程度が多いように思います。)だけでこの補償が受けられます。

これが高いか安いかを判断するのは、それぞれの社長の判断基準によるかなと思いますが、過去にわたくしが関与した企業で社長と部長が出張中の交通事故で死亡するするという痛ましい事故がありました。
この社長は、生命保険による保障を用意していましたので、相当額の保険金が遺族に支払われましたが、同時に労災の特別加入もされていたのです。
奥様とお子様(当時10歳程度かな)が遺族としていらっしゃいましたので、お子様が18歳になるまで毎年400万円余りの遺族年金が支給されることとなったようです。(その他に一時金として300万円葬祭料として120万円が支払われたと推定されます。)

まさか、ご自身にこのような災厄が降りかかると予想して「特別加入」をされたわけではなく、従業員(当時は5名程度だったかな)の雇用保険の手続きを委託するついでに加入されたのかなと思いますが、「特別加入」されていて結果的には不幸中の幸いだったと思いました。

死亡事故のような例はあまり多いものではありませんが、特別加入による恩恵は一般的な療養費が不要になるような部分が多いと思いますし、昨今では建設業従事者(社長や一人親方等)の特別加入が現場入場の必須アイテムになりつつあるような状況を考えると、事業主の「特別加入」は結構有効なのかなと最近思うようになってきました。

皆さんはどのように思われましたか?

※本ブログでは、「中小事業主の特別加入」を取り上げましたので説明を省略しましたが、「一人親方等」や「海外派遣者」等の特別加入制度もありますので、また別の機会に取り上げたいと思います。
※なお、事業主の労災認定には、労働者の認定の場合と基準が異なりますので、すべての業務上の事故が認定されるわけではありませんが、詳しく書くともっと長くなりますので、詳細はまたの機会に・・・。

『精神障害の労災認定』の基準

このほど、厚労省は今年9月に実施した、『ブラック企業』対策のための集中取り締まりの結果を公表しました。調査対象とした5,111社のうち、実に82%にあたる4,189社で、賃金不払いや違法な時間外労働といった違法行為が確認されたそうです。
労働基準監督署が是正指導を実施し、これに従わない場合は書類送検する方針とのことです。

違反の内訳は、「労使の合意を超えて時間外労働させる」などの労働基準法違反が43.8%(2,241社)と最多。
「正社員の多くを管理職として扱い、時間外の割り増し賃金を支払っていない」(名ばかり管理職)などは23.9%(1,221社)、「給与や休日などの労働条件が明示されていない」も19.4%(990社)あったそうです。

業種別では、飲食店などの「接客娯楽業」が87.9%でトップだったようです。

以前、飲食店の従業員が、長時間労働による過労により『過労自殺』を図り、亡くなっていたという報道がありました、過労自殺のような痛ましいケースのすべてが、そのブラック企業で起こっているとは申しませんが、ある程度関連性はあるのかなと思った次第です。

そこで最近の『過労自殺』いわゆる『精神障害の労災認定の基準』について、少し説明をしたいと思います。

精神障害の労災認定要件は次の通りです。

①認定基準の対象になる精神障害を発病していること
②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
業務以外の心理的負荷個体側要因により発病したとは認められないこと

それでは、認定要件を満たすかどうかの判断方法ですが、次の通りです。

① 認定基準の対象になる精神障害かどうか?d4875ea1.png

認定の対象となる精神障害は、上の表「精神および行動の障害」に分類される精神障害であって、認知症や頭部外傷による障害(F0)、アルコール・薬物依存(F1)は除かれます。
業務により発症する可能性のある精神障害の代表格はうつ病(F3)や急性ストレス反応(F4)等が挙げられます。

② 業務による強い心理的負荷が認められるかどうか?
 労働基準監督署の調査に基づき、発病前おおむね6か月の間に起きた業務による出来事について、『業務による心理的負荷評価表』により「強」と評価される場合に認定要件②を満たすとしています。
 細かい評価方法は割愛しますが、前述の評価表にある「特別な出来事」(生死にかかわるような業務上のケガや病気といった「心理的負荷が極度のもの」や「極度の長時間労働」)がある場合は「強」と認定され、「特別な出来事」が無い場合は、具体的な出来事を当てはめて評価し「強」「中」「弱」と評価するようです。

因みに長時間労働がある場合の評価方法は次の通りです。
(A)「特別な出来事」としての「極度の長時間労働」
 発病直前の極めて長い労働時間を評価します。
 【「強」と評価される例】
・発病直前の1箇月におおむね160時間以上の時間外労働を行った場合。
・発病直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行った場合。
(B)「出来事」としての長時間労働
 発病前1箇月から3箇月間の長時間労働を出来事として評価します。
 【「強」に評価される例】
・発病直前の2か月連続して1ケ月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行った場合。
・発病直前の3か月連続して1ケ月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行った場合。
(C)「他の出来事」と関連した長時間労働
 出来事が発生した前後に恒常的な長時間労働(月100時間程度の時間外労働)があった場合、心理的負荷の強度を修正する要素として評価します。
 【「強」と評価される例】
・転勤して新たな業務に就き、その後月100時間程度の時間外労働を行った場合。

と言った具合に、長時間労働と心理的負荷の関連性がやはり評価基準としては重くとらえられていることが分かります。

③-1 業務以外の心理的負荷による発病かどうか?
 『業務以外の心理的負荷評価表』を用い、心理的負荷の強度を評価します。
 表の『Ⅲ』に該当する出来事がある場合などはそれが発病の原因であるかどうかを慎重に判断します。
③-2 個体側要因による発病かどうか?
 精神障害の既往歴やアルコール依存状況など個体側要因について、その有無とその内容を確認し、個体側要因がある場合には、それが発病の原因であるといえるか慎重に判断する。

以上の通り、労災認定とするには、精神障害の発病が「業務上の事由」によるものであることが必要となりますので、③-1,2という「業務外」又は「個体側要因」による発病であるかどうかが慎重に判断されるわけです。

最後に、『過労自殺』(労災認定の対象となる自殺)の取扱についてですが、次のような取扱いがされているようです。
 業務による心理的負荷によって精神障害を発病した人が自殺を図った場合は、精神障害によって、正常な認識や行動選択能力、自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態に陥ったもの(『故意の欠如』)と推定され、その死亡は「労災認定」されることとなるようです。
 つまり、長時間労働がある場合の評価方法にあるように直近1箇月で160時間を超過するような時間外労働を強いられた結果、『自殺』に至った場合などは、機械的に『過労自殺』と認定され、企業がその責任を問われるということがあるということになります。
 労働者の勤務時間を適正に把握する責任が企業にはありますので、十分に注意を払った労務管理の必要性がますます増しているように思いました。

交通事故の被災労働者が休業補償を120%貰う方法

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労働者が就業中に自動車による交通事故に遭うことって結構ありますね。
わたくしも若い頃にサラリーマンをしているときに会社の営業車で事故をしたことがあります。
幸運だったことにけが人が出るような大事には至らず、物損のみで済んだので労災申請にまでは及びませんでしたが・・・

自動車事故といっても色々なケースがありますが、今日ご紹介をしようと思っているのは、被災労働者が完全な被害者である場合です。

状況はこんな感じです。
K社の労働者A君は会社の営業車で得意先巡回中に、信号停止をした際に後続の車両運転手Bの前方不注意により、追突をされました。この事故でA君は、右足骨折と前歯の欠損という負傷をし、全治2か月の休業を余儀なくされました。
当然、自動車事故の被害でしたので、K社とA君は、Bから損害全額の補償を受けることで事故処理を進めておりました。

事故が概ね解決したころ、偶々K社に訪問することがあり、今回の事故があったことを知ることになりました。今回は100%無過失の事故でしたので、労災は使用する必要がないだろうということで、わたくしへの連絡がなかったようでした。

このような事故の場合は、結構労災申請がなされないことが多く、請求漏れが起こっているようですが、被害事故でも請求できる労災保険が一つあります。
これが特別支給金です。
皆さんもご存じのとおり、第三者行為災害の被害事故の際に就業中の事故でも相手方から補償が受けられる場合は、その損害賠償額の範囲で労災補償が控除(不支給)されるという規定がありますが、特別支給金はこの規定の適用を受けないと定められています。
つまり、100%無過失の被害事故であっても、すべての損害賠償の支払い処理が終わり、示談が成立しておれば、この特別支給金を請求することができるということです。

わたくしは、K社の社長とA君にこの特別支給金の規定を説明し、特別支給金の申請をするようにお勧めしました。
その結果、A君は、B(正確にはBの契約する自動車保険会社)より治療費、休業補償、後遺障害補償の全額を受けたうえで、休業特別支給金(休業給付基礎日額の20%)を受けることができ、結果的に休業補償額は休業補償額の120%ということになったのです。

なお、余談ですが、交通事故の相手方保険会社の事故担当者が、労災事故を先行して手続きを進めてほしいということを言ってくることがあるようです。もちろん、労災申請と自賠責保険のいずれを先行するかということは法的に決まっていることではありませんので、労災を先行しても問題はありません。
(実際には「自賠責保険先行で処理するように」というような通達が出ていますので、労働基準監督署は「自賠責先行」を進めるようですが・・・)
しかし、労災を先行すると自賠責保険の保険金額が微妙に変わることがあります。
これは、被害者が労災保険の補償を受けた場合は、休業補償額より労災保険での給付分を控除することができるという約款になっているからです。
つまり、労災を先行すると休業補償額は100%で止まってしまうということです。

同じ事故の補償ですが、労災先行と自賠責先行の順番が変わるだけで、補償額が20%も増減する可能性があるということになりますので、注意が必要ですね。

なお、このケースでは自賠責(+任意保険)先行で問題はありませんでしたが、過失割合が争われるケースや相手方が保険の状況次第では、労災先行の方が被害者を救済できることもありますので、ケースバイケースで処理方法は検討が必要ということだけ申し添えます。

通勤の逸脱・中断と通勤災害

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通勤途上での事故による負傷等(いわゆる通勤災害)が労災保険の適用を受けることが出来るということはよく知られていることと思います。
また、通勤途中にコンビニで日用品の購入に立ち寄ったとか病院やクリニックの診察を受けるために寄り道をした場合等は、労働者災害補償保険法第7条第3号但書き、「通勤経路の逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。」に定める通り、通勤災害の認定を受けることは可能と言えます。

先日、知り合いがコンビニの中で転んでケガをしたというのが話題があり、ふと思い出したのですが、以前わたくしの担当する関与先の事業所の労働者でこのようなことがあり、少々慌ててしまったことがありましたのでご紹介したいと思います。

その事故は、通勤途中の路上で誤って転倒したことによる頭部打撲(外傷性のくも膜下出血に至ったため少々大事になった事例ですが・・・)による手術・入院ということで問題なく「通勤災害」に認定されるようなものでしたが、この事故について労働基準監督署より詳しく事故状況の確認をしたいという依頼があったのです。
最初は、「くも膜下出血」というケガであったため、病気の疑いでもあったのかと思ったのですが、実際には被災者がケガをした場所が、コンビニの目の前であり、救急搬送された場所の記録がコンビニの店舗内という記録があったためでした。
これは、コンビニの前での事故だったため、路上で倒れていた被災者をコンビニ店員が救助のため店舗内に担ぎ込んで救急車の到着を待っていたというのが事実でしたが、労働基準監督署の確認事項は事故の発生場所がコンビニの中か外かという確認だったのです。

そこで思い出したのが、上記の労働者災害補償保険法第7条第3号但書きでした。

仮に被災者が帰宅途中、日用品の買い出しのためにコンビニに立ち寄っても通勤行為の再開後であれば通勤災害認定はされますが、これが中断中の出来事であれば「認定」はされないということなのです。
この事案では、事故の発生場所がコンビニの外だったため「通勤災害」に認定されましたが、この被災者が足を滑らせたのがコンビニに入ってからであったならこの通勤災害は認定され無かったということになります。
もちろん、この被災者は元々コンビニに立ち寄るつもりはなかったと思いますが、通勤経路の途中にあるコンビニであり、普段から利用しているお店であったことは事実であるため、あの日本当にコンビニに入ってから転んでいたのであれば、更に不幸なことになったかもしれません。

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