Nishimoto労務クリニック

大阪市西区の社会保険労務士法人西本コンサルティングオフィスがご提供する労務問題に関するクリニックです。 労務相談のセカンドオピニオンとしてもお気軽にご利用いただけるような場にしたいと思っております。

2014年06月

教育訓練給付金の拡充及び教育訓練支援給付金の創設

平成26年10月1日より、雇用保険法の「教育訓練給付金」制度が改正され、一部支給内容の拡充と新しい給付金が創設されることとなりました。

教育訓練給付金は、数年前に大幅に給付内容が縮小されたものですが、今回は拡充ということですので、拡充内容を少しご紹介したいと思います。

(1)「教育訓練給付金の拡充」について

これは従来「受講費用の2割を支給、給付上限10万円」であったものを、中長期的なキャリア形成を支援するため、専門的・実践的な教育訓練として厚生労働大臣が指定する講座を受ける場合に、支給内容を次の通り拡充するというものです。
給付律の引き上げ(受講費用の4割、年間上限32万円)
受講修了日から一年以内に資格取得等し、被保険者として雇用された又は雇用されている等の場合には20%を追加支給(合計60%、年間上限48万円)
●給付期間は原則2年(資格の取得につながる場合は最大3年)

【支給対象者】
●2年以上の被保険者期間を有する者(2回目以降に受ける場合は10年以上の被保険者期間が必要)

【拡充対象となる講座】
次の1~3の教育訓練のうち、受験率、合格率、就職・在職率などの指定基準を満たすものとして、厚生労働大臣が指定した講座(専門実践教育訓練)が対象となります。
(8月中旬から指定予定)

①業務独占資格・名称独占資格の取得を訓練目標とする養成施設の課程
(資格を持たずに業務を行うことが法令で禁止されている資格)
助産師、看護師、准看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、歯科衛生士、歯科技工士、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師、柔道整復師、美容師、理容師、測量士、電気工事士、建築士、海技士、水先人、操縦士、航空整備士
(資格がなくても業務を行うことはできるが、その名称の使用は法令で禁止されている資格) 
保健師、調理師、栄養士、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、保育士、製菓衛生師 等
②専門学校の職業実践専門課程[訓練期間は2年]
専修学校の専門課程のうち、企業などとの連携により、最新の実務知識などを身に付けられるよう教育課程を編成したものとして文部科学大臣が認定したもの
③専門職大学院[訓練期間は2年または3年以内]
高度専門職業人の養成を目的とした課程

(2)教育訓練支援給付金を創設

こちらは、45歳未満の離職者が上記の教育訓練を受講する場合に、訓練中に離職前賃金に基づき算出した額(基本手当の半額)を給付するという仕組みです。
こちらは、平成30年度までの暫定措置となっています。

厚生労働省作成の受給希望者向けリーフレットは次のリンクから→http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000047770.pdf

労働者派遣法改正法案が廃案になりました。

Photo_2 第186回通常国会で「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」が提出・審議されていたのはご存知のことと思います。
当ブログでも、先般、法律案の概要をご紹介させていただきましたのでご覧になった方もいらっしゃるかと思います。

現時点の国会は自民党を中心とする巨大与党が牛耳っている状況ですので、あっさり成立になるものと予測していました。

実際、労働局の担当部署等で話しをうかがっているときも、雰囲気は既に法案が成立済みで来年の4月の施行に向けて準備に余念がないというような感じを受けたものでした。

しかし、結果は「廃案」でした。

時間切れによる「継続審議」扱いではなく、「廃案」でしたので少々驚いたところでした。

本件法案は、内閣提出の法案ですので、内閣の閣議決定を経たものですので、まさかの「廃案」というのが印象でした。
当ブログでも少々問題点のありそうな法案というのは書かせていただきましたが、成立することを前提で考えておりましたので、今後どのような扱いになるのかが気になります。

秋の臨時国会あたりでまた復活して再審議・成立になるのかなとも思いますが、改めて法案の今後について注目したいと思います。

社会保険料の滞納から差押え処分について

最近、社会保険料の滞納に対して、差押え処分になる事業所が増加しているように感じます。
実際に身近な所でも差押えの警告の通知や実際に差押えが行われたという事例を目の当たりにしていて、かなり増加しているのかなと思っておりました。
少々興味があったので、日本年金機構の「平成24年度業務実績報告書」なるものをのぞいてみたところ、確かに差押えが増加しており、平成24年度の差押え事業所数は22,556件となっており、前年の17,798件に対して5,000件弱も増加していました。

平成24年度末の滞納事業所数が179,106件とのことですので、滞納事業所数に差押え事業所数を加算するとおよそ20万件になりますので、滞納事業所の1割以上の事業所が差押え処分を受けているという計算になります。

更に恐ろしいことに、滞納処分の「国税庁委任」という仕組みがありますが、平成24年度までは適用された事業所はありませんでしたが、平成25年5月には3件が国税庁委任の対象となり、その後はまだ公表されていませんが推して知るべしかなと思います。

皆さまの事業所がこのような事態に陥ってはいけないのですが、一般常識として「社会保険料の滞納から差押えまでの流れ」を少し説明したいと思います。

1.保険料の徴収
 社会保険料は、賦課月の翌月末が納付期限となっており、口座振替又は納入告知書にて納付する仕組みとなっています。

2.納付期限までに納付がされないとき
 電話や文書による年金事務所来所を求め、又は年金事務所職員が事業所を訪問し、納付督励を行い、早期の完納をすすめます。

3.督促
 社会保険料を納付期限までに納付されない事業所に対しては、督促状を送付するとともに、電話等による納付督励が行われます。
 督促状で指定した期限までに完納されない場合は、滞納保険料等を回収するための「滞納処分」に突入します。
 この時、各々の事業所の事情によっては、分割納付による完納を認めたり、早期の完納を約束される場合は指定期限を過ぎても「滞納処分」は猶予される場合もあります。

4.滞納処分の流れ
 納付督励によっても、完納のめどが立たない場合は、財産調査を行い、必要に応じて「滞納処分」が行われます。この際、滞納額が高額でかつ悪質な滞納事業所については「国税庁委任」という仕組みがあります。

上記は、日本年金機構のホームページにアップされている同機構としての「滞納整理」の取組について公表されている記事からの抜粋ですが、公然と「滞納処分」の仕組みが案内されているのが、滞納事業所の多さを物語っているのでしょうね。

と、ここまで、つらつらと滞納処分について書いてきましたが、実際に督促状が届いたときにどのように対応すべきなのでしょうか?

何もせずにそのまま放置なんてするととんでもないことになります。
日本年金機構ホームページに記載されているように、「納付計画」を合意することによって、分割納付が認められたり、納付猶予をしてくれたりもします。
先ずは年金事務所で相談するのが第一歩と言えるかもしれません。

しかし、納付計画の相談もせず、督促状も放置したままだったらどういうことが起こるかというと、早ければ督促状送付から約10日後、「財産調査」が行われることになります。

「財産調査」では、滞納事業所の取引先金融機関の預金残高、保有している債権、取引先の売掛金、不動産等を含めた全財産が調査対象になります。
先ず、調査は任意で行われますが、財産の確認ができなかったな場合は、強制的な捜索の段階に進みます。
捜索によって「滞納処分」に充当できる財産が見つかれば「差し押さえ処分」が執行されます。

この対象となる財産は、主に「現金」「預金」「不動産」「有価証券」、そして「売掛金」等が挙げられます。
特に「売掛金」の調査では、滞納事業所の全ての得意先に文書等でにより売掛金の額、決済日等の調査依頼が送付されます。
この回答を受けて、実際に差し押さえの決定通知が滞納事業所に通知されることとなります。

つまり、財産調査や捜索のフェーズに移ると得意先等に日本年金機構から差し押さえの準備をしていますよというような通知が出されるということになります。
当然、信用問題にもつながりますので、本業への影響も多大なものになるのは、想像に難くないと思います。

差し押さえ処分は、「滞納者が督促状の送付を受けても支払う意思を示さない場合」に行われます。
因みにその判断がなされるのは督促状の送付から約10日後となります。
すなわち、督促状の送付から10日以降ならば差し押さえを執行できると思った方がよいということになります。

実際に差し押さえというフェーズまで至った場合、企業としての存続の問題となりますので、このような事態を免れるためにも、督促状が届いた段階で今後の支払いの予定等の説明および相談に行くことをお勧めします。

もちろん、督促状が届かないことが一番良いことですがね。

非正規労働者の資格制度創設は正規雇用の動機づけになる?

6月7日、政府は非正規労働者を対象とした資格制度を創設する方針を固めたようです。
非正規労働者の待遇改善や正社員への登用を進めるためというのが、その目的だそうです。
主に接客能力等現場での「仕事ぶり」を評価する制度で、今後の『新成長戦略』に盛り込んでいくようです。
予定では平成27年の通常国会で『職業能力開発促進法』等を改正し、平成28年度からの導入を目指すとのことです。

具体的な資格は、非正規労働者の多い①流通業②派遣業③教育④健康の4業種で、接客等の対人サービスに従事する労働者を対象とする。
資格の認定は、厚生労働省から委託を受けた業界団体がこれにあたるようで、これまでに日本百貨店協会、日本生産技能労務協会、全国学習塾協会、日本フィットネス産業協会の4団体が政府の方針に応じた模様です。
非正規労働者がこの資格の取得により、正社員への登用や転職へのアピールポイントになることが期待されているようです。
なお、この4業種で制度を先行実施し、平成29年度以降は対象業界を広げていく方針ということです。

しかしながら、本当に政府が思っているようにこの制度が、非正規労働者のキャリアアップ・処遇改善に貢献するのでしょうか?

実際に始まってみないと評価はできませんが、労働市場における非正規労働者の現状を鑑み、この資格を保有していることが、雇う側の正社員登用の決め手になるでしょうか?
これまでも、労働能力に関わる資格制度はいくらでもありましたが、正規雇用の動機づけにつながったという評価はあまり聞いたことはありませんので、甚だ疑問と言わざるを得ませんね。

いずれにしても、資格認定業者だけが潤うようなものにならないことを祈る次第です。

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