Nishimoto労務クリニック

大阪市西区の社会保険労務士法人西本コンサルティングオフィスがご提供する労務問題に関するクリニックです。 労務相談のセカンドオピニオンとしてもお気軽にご利用いただけるような場にしたいと思っております。

2014年02月

介護保険料の改定

平成26年度の介護保険料の値上げが発表になりました。

現行の15.5/1000(7.75/1000ずつ労使折半)が17.2/1000(8.6/1000ずつ労使折半)に1.7/1000の値上げになるようです。

改定時期は、平成26年3月分保険料(4月納付分)からになります。

健康保険料は、据え置きということになりましたが、介護保険料だけでみると10%強の値上げということになります。

協会けんぽの説明では、介護給付が年々増加しており、協会けんぽが負担する介護納付金も増加し、このままでは700億円の赤字が見込まれるそうです。

この現実を踏まえると、この大幅な値上げも致し方ないのかとも思いますが、来年以降は健康保険料の改定も予想されますし、厚生年金保険料は平成29年9月まで法定通りの改定が待っていますので、今後ますます被保険者・事業主の負担は増加するということになるのかもしれません。

これからの負担の増加を考えると、医療・介護分野の負担軽減のための施策(例えばジェネリック医薬品の利用や特定保健指導等の予防医療)というものを我々も真剣に理解するように努めなければならない時代になったのかもしれませんね。

派遣労働者の直接雇用の申込義務について

労働者派遣法(正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」という)の第40条の4に次のような条文があります。

【法第40条の4】
派遣先は、第35条の2第2項の規定による通知(いわゆる『抵触日の通知』)を受けた場合において、当該労働者派遣の役務の提供を受けたならば第40条の2第1項の規定に抵触することとなる最初の日(『抵触日』を指す)以降継続して第35条の2第2項の規定による通知を受けた派遣労働者を使用しようとするときは、当該抵触することとなる最初の日の前日までに、当該派遣労働者であって当該派遣先に雇用されることを希望するものに対し、労働契約の申込みをしなければならない。(『義務規定』)

つまりこれは、『抵触日の通知』を受けた派遣労働者を『抵触日』を過ぎて、さらに継続して雇用する場合、その派遣労働者が直接雇用を希望するのであれば、派遣先事業主は直接雇用の申込を行わなければならないという義務を定めているということになります。

この対象となる労働者ですが、『派遣受入期間に制限のある業務』と『派遣受入期間に制限のない業務(いわゆる専門26業務)』で異なります。
①『派遣受入期間に制限のある業務』の場合
 派遣受入期間の制限に抵触する日(当該業務に3年間継続して受入れた日)以降も派遣社員を使用しようとするときは、派遣先事業主はその制限に抵触する日の前日までに、「当該派遣労働者であって当該派遣先に雇用されることを希望するものに対し、雇用契約の申込みをしなければならない」とされています。
②『派遣受入期間に制限のない業務(いわゆる専門26業務)』の場合
 同一の派遣社員を3年を超えて受け入れている場合に、「当該同一の業務に労働者を従事させるため、当該3年が経過した日以後労働者を雇い入れようとするときは、当該同一の派遣労働者に対し、雇用契約の申込みをしなければならない」と規定されています。したがって、派遣労働者を3年を超えて受け入れている場合には、仮にその業務に新たに従業員を雇い入れる場合は当該派遣労働者を優先的に雇入れるよう申込みをすることを義務付けているわけです。

この規定を踏まえて、最近上記①に該当するケースがあり、派遣労働者を直接雇用する契約が発生しましたが、この際に派遣会社より『紹介料』の見積書が派遣先事業主の元に届きました。
当然、事業主としては派遣労働者を引き抜くようなことになるので、この紹介料は支払わなければならないと思っていたようですが、金額が妥当なのかということで相談がありました。
詳しく確認すると、『抵触日の通知』も提出されており、明らかに直接雇用の申込義務が発生している案件でしたので、『紹介料』はあり得ないのではと説明したところ、派遣会社の担当者は『あくまでもお願いです。』という説明に変わって、大きくトーンダウンするということがありました。

小生の知る限り、派遣先事業主でも『労働者派遣法』に精通した事業主は皆無で今回のようなケースでは、『移籍料』的な意味合いで金銭が発生するものと思い込んでいる方が大勢を占めていると思います。
当然、今回の案件ではこの派遣会社への信用が、大きく損なわれる結果となったのは言うまでもありません。

このようなケースは、法律を知らなければ払ってもらえるので、当然のように請求しても良いということは通らないと思いますが、派遣会社としても派遣労働者を引き抜かれるという側面もあり、同情の余地もあるかなと思います。
しかし、これによって信用を失墜することになったことを考えると、やはり適法に対処するのが一番かなと改めて思った事件でした。

フレックスタイム制の導入について

変形労働時間制の一形態として、フレックスタイム制というものがあります。
フレックスタイム制とは、始業と終業の時刻を労働者自身が決定し、労働者自身のライフスタイルとの調和を図りながら、効率的に働くことを可能としながら、労働時間のスリム化を目指した制度と言えます。

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一般的なフレックスタイム制は、モデル例のとおり1日の労働時間をコアタイム(必ず勤務する時間帯)とフレキシブルタイム(任意で勤務できる時間帯)とに分けています。
コアタイムは、設定が必須にはなっていませんので、全部の労働時間をフレキシブルタイムにしてもかまいません。
しかしながら、小生の経験上、『仕事の打ち合わせ』や『営業会議』など、みんなが顔を会わせる機会を作ることも企業には必要ですので、やはりコアタイムを設けることは大切なのかなと思います。

では、フレックスタイム制の導入はどのように進めればよいのでしょう。

【採用の要件】
(1)就業規則その他これに準ずるものにおいて、始業及び終業の時刻を労働者にゆだねることを規定する。
(2)労使協定で必要事項を協定する。
 ①対象となる労働者の範囲
 ②清算期間(1か月以内の期間に限る)
 ③清算期間中の総労働時間(清算期間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間を超えないこと)
 ④標準となる1日の労働時間
 ⑤コアタイム(定める場合)
 ⑥フレキシブルタイムに制限を設ける場合は、その時間帯の開始と終了の時刻

つまり、フレックスタイム制を導入するためには、就業規則での規定と労使協定での協定の両方の要件を満たす必要があります。

また、対象者個々で就労する時間が異なりますので、労働時間の過不足という問題も生じます。
超過した場合は、原則当月の賃金支払い時に清算する必要があり、特に法定労働時間を超過した場合は、割増賃金の対象となりますので注意しなければなりません。
逆に不足した場合は、この不就労時間を当月の賃金支払い時に控除する方法と、当月分の所定の賃金は当月分として支払い、不足分を翌月の労働時間に加算して労働させる方法があります。
ただし、建前上、翌月の総労働時間に加算する場合の加算できる限度はその月の法定労働時間の総枠の範囲内に限定されますのであまり現実的ではないかもしれません。

最後に、フレックスタイム制を導入したとしても、時間外労働協定(いわゆる36協定)や使用者の労働時間の把握義務は免除されるわけではありませんので、時間管理は正確に実施しなければならないということは同じと認識すべきと考えます。

賃金債務の消滅時効と『時効の援用』

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皆さんは、借金(債権)に『時効』があることをご存知でしょうか?
民法第167条に規定されている【債権等の消滅時効】が一般的と思います。この時効は10年となっています。
消費者金融等の【商事債権】の場合は、商法第522条で5年と定められています。
労働者の賃金の場合どうかというと、民法の10年ではなく、労働基準法第115条により2年(退職手当は5年)と定められています。
この規定は、労働基準法で使用者側を有利にしているとても珍しいケースと言えます。

では、この消滅時効ですが、どうすれば時効が成立するのかを少しご紹介したいと思います。
賃金債務の弁済期(いわゆる給料日)から2年を経過すると自動的に時効が成立するようなイメージがありますが、法律というのは色々と手続きが必要でして、消滅時効を成立させるには、『時効の援用』という行為が必要になります。

時効の援用とは、債務者が時効の利益を積極的に主張して初めて、時効の利益を得ることになると定められています。
つまり、「この賃金債務は、時効であり、支払うつもりはありません」とはっきり主張する必要があるということです。
このような手続きが必要なのは、時効の利益を享受しないという意思も尊重する必要があると法律が認めているからと言えます。
一般的な使用者は、賃金債務の履行が出来なかったことに負い目を感じているものです。資金繰りが好転したら以前支払えなかった給料を遅れてでも払いたいと思っているものです。
このような気持ちを『時効成立』で支払うことが出来なくなる事態を避けるというのが主旨と言われています。

時効の援用の方法ですが、極めて簡単に言えば相手方(賃金の場合は労働者)に何らかの形で伝えれば良いだけということになります。
しかし、口頭で言っただけでは証拠になりませんので、一般的には「内容証明郵便」を利用して、「時効の援用」を行った日付を明確にする方法が広く用いられています。

ただし、『時効』は、「裁判上の請求」や「差押え」、「催告」をする等により、『中断』させることができますので、実際には消滅時効の期間が過ぎただけでは時効が成立するかどうかは分からないというのが現実です。

賃金債権の場合、実際にはあまり内容証明郵便を送達するようなケースには出会わないように思いますが、『未払い残業手当等』の請求権においても、同様に『時効』の問題が生じますのでそのようなときにはこの制度をよく理解している必要があるかもしれませんね。

「定額残業代制度」の有効性について

昨今、労働時間管理の煩雑さを緩和する目的等で、「定額残業代」の導入を検討する事業主が増加しているようです。
小生の顧問先でも「固定残業手当」などの名目で定額残業代の支給を実施している、事業所がいくつか存在しています。
もちろん、「定額残業代」を導入していたとしても、「労働時間適正把握基準」による使用者の義務が免除されるわけではありませんが、給与計算の煩雑さや支給額の計算ミスのリスクを軽減するという意味では大きな意義があると思います。
また、「定額残業代」を導入したことにより、それまでの実績対比で「所定時間外労働が減少した」という事例もありました。
この会社の場合、「固定残業手当」の対象時間を予め25時間と定め、これを超過したときは超過分の残業手当を追加支給するという仕組みを軸にして制度設計をしましたが、導入後はそれまでの長時間残業は姿を消し、固定残業手当の対象時間の範囲内で収まるようになったのです。
その上、生産性に目立った変化はなかったということで、実は無駄な時間外労働が多かったということが判明したのです。

では、「定額残業代」は、どのようにすれば、適法な制度になるのでしょうか?

割増賃金は、本来時間外の時間に応じて支給するのが原則ですが、定額で支給してもそれで違法となるものではありません。

①「定額残業代」が、就業規則・賃金規程等に残業代として支給するということが明記されていること。
②「雇用契約書」等で「定額残業代」の内容を明記し、労働者本人と個別に合意すること。
③「給与明細」等に残業時間数等を明記すること。

以上の要件を満たし、かつ、定額残業代の対象時間を明確にすること、その時間を超過した場合は、超過分の残業手当を別途支給するなどのルールを明確にしている場合には、「定額残業代」が有効とされます。

つまり、昔ながらの「営業手当」や「管理職手当」に残業手当が含まれるというような、あいまいな規定では認定されず、未払い残業の請求対象になりかねないということなのです。

また、最近では実際の支給明細書の記載に所定時間外労働時間の明記や定額残業手当の対象時間の明記などが要求される例も報告され、制度運用がますます難しくなっているように思います。

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