Nishimoto労務クリニック

大阪市西区の社会保険労務士法人西本コンサルティングオフィスがご提供する労務問題に関するクリニックです。 労務相談のセカンドオピニオンとしてもお気軽にご利用いただけるような場にしたいと思っております。

営業秘密を手土産に競合他社へ転職した社員を逮捕---大阪府警

 大阪府警生活経済課は、1月13日大手家電量販店から競合他社の大手家電量販店に転職した容疑者を前職企業の営業秘密を不正取得したとして、「不正競争防止法違反容疑(営業秘密の不正取得容疑)」で逮捕しました。
 同課によると、容疑者は容疑事実を認め、「損害を与える目的はなく、転職先で格好付けて(情報を)生かすためだった」などと供述しています。
 容疑者は、平成25年12月末に前職を退職し、平成26年1月に再就職したが、この不正が発覚したことにより同年12月末に懲戒解雇されたようです。
 本件の逮捕容疑は、前職在職中、職場のパソコンに遠隔操作ソフトをインストールした上で、平成26年1月頃、転職企業社内からパソコンを操作し、営業秘密に当たるデータ等4件を不正取得した疑いとのことでした。

 これまでも、同業他社への転職時に前職企業の営業秘密をお土産に持ち出していたいう話をよく耳にしますが、なかなか逮捕事例までは聞き覚えがなかったので、少々驚きました。
 そこで、本件逮捕容疑を少し調べてみましたのでご紹介したいと思います。

 
 本件の逮捕容疑である「営業秘密の不正取得(営業秘密侵害罪)」とは、原則として、事業者の営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、不正取得、領得、不正使用、不正開示のうち一定の行為について、個人については10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金(又はこれを併科)を、法人については3億円以下の罰金(両罰規定)を科すこととしています。
 日本国内で管理されていた営業秘密を、国外で不正使用、不正開示した場合も処罰対象となります。

 不正競争防止法上、営業秘密とは、「秘密として管理されている生産方法・販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」(不正競争防止法第2条第6項)とされており、以下の3要件を満たすことが必要とされています。

①秘密として管理されていること(秘密管理性)
 ・情報にアクセスできる者を制限すること (アクセス制限)
 ・情報にアクセスした者にそれが秘密であると認識できること (客観的認識可能性)
②有用な営業上又は技術上の情報であること(有用性)
 当該情報自体が客観的に事業活動に活用されていたり、利用されることによって、経費の節約、経営効率の改善等に役立つものであること。現実に利用されていなくてもいい。
③公然と知られていないこと(非公知性)
 保有者の管理下以外では一般に入手できないこと。

 以上のようにかなりの重い罰則の適用がある犯罪であり、本件の容疑者については軽い気持ちでの行為だったのかもしれませんが、安易な営業秘密の取り扱いは大きな代償を払う可能性があると認識することが重要なようです。

謹賀新年

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新年あけましておめでとうございます。
旧年中は、何かとお世話になりありがとうございました。
本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

今年のお正月は、京都の久美浜で迎えました。
学生時代から幾度となく訪れた港町ですが、ここまでの積雪は経験したことがありませんでした。
自家用車での訪問でしたので、新年早々なかなかスリリングな経験をさせていただきましたが、息子は雪遊びに大はしゃぎで、『アナと雪の女王』の歌を歌いまくっていました。

今年も当ブログでは、労務関連トピックスをアップしていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

社労士法人西本コンサルティングオフィス
代表社員 西本 和彦

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「1年単位の変形労働時間制」導入に関する注意事項

労働基準法に規定する『変形労働時間制』を分類すると4種類の制度に分けられます。

Ⅰ.1箇月単位の労働時間制(労基法第32条の2)
Ⅱ.1年単位の変形労働時間制(同第32条の4、第32条の4の2)
Ⅲ.フレックスタイム制(同第32条の3)
Ⅳ.1週間単位の非定型的変形労働時間制(同第32条の5)

本日は、その中でも最もポピュラーな制度と思われる『1年単位の変形労働時間制』の導入に係る注意事項をご紹介したいと思います。

【1】制度の意義

『1年単位の変形労働時間制』は、1箇月を超え1年以内の期間を平均して1週間あたり40時間を超えないことを条件として、主に季節によって、繁閑の差が大きい事業場において、繁忙期に長い労働時間を設定し、かつ、閑散期に短い労働時間を設定することにより、効率的に労働時間を配分して、年間の総労働時間の短縮を図ることを目的に設けられたものです。

【2】制度の要件

1.労使協定の締結
 次の事項のすべてを労使協定による定める必要があります。

①対象労働者の範囲
  法令上、対象労働者の範囲に制限はありませんが、その範囲は明確にする必要がある。

②対象期間及び起算日
  対象期間は1箇月を超え1年以内の期間で設定します。また、起算日も設定する必要があります。

③特定期間

  上記②の対象期間中の特に業務の繁忙な期間を特定期間として定めることができます。もちろん、その必要がなければ定めなくてもかまいません。

④労働日及び労働日ごとの労働時間
  上記②の対象期間を平均して、1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲で定める必要があります。また、後述の【2.労働日及び労働日ごとの労働時間に関する限度】にも適合する必要があります。

⑤労使協定の有効期間
  1年単位の変形労働時間制を適切に運用するために対象期間と1年程度とすることが望ましいとされています。

2.労働日及び労働日ごとの労働時間に関する限度

①対象期間における労働日数の限度(対象期間が3箇月を超える場合)
  対象期間が1年の場合・・・280日
  対象期間が3箇月を超え1年未満の場合・・・280日×(対象期間の歴日数/365日)

②対象期間における1日及び1週間の労働時間の限度
  ㋐1日の労働時間は10時間、1週間の労働時間は52時間が限度となります。
  ㋑対象期間が3か月を超える場合は、次のいずれにも適合しなければなりません。
    ・労働時間が48時間を超える週を連続させることができるのは3週以下
    ・対象期間を3箇月毎に区分した各期間において労働時間が48時間を超える週数は、週の初日で数えて3回以下

③対象期間及び特定期間における連続労働日数の限度
  ㋐対象期間・・・連続労働日数の限度は6日間
  ㋑特定期間・・・連続労働に数の限度は1週間に1日の休みが確保できる日数(12日

3.労働日及び労働日ごとの労働時間の特定の特例

 労働日及び労働日ごとの労働時間の定め方は、①対象期間全てについて定める方法と②対象期間を1箇月以上の期間ごとに区分して各期間が始まるまでに特定する方法の2つがあります。

 上記②の1箇月以上の期間毎に区分する場合は、次の要領で労働日・労働時間を労使協定に定めます。
  ㋐最初の期間における労働日及び労働日ごとの労働時間
  ㋑上記㋑以外の期間における労働日数及び総労働時間
   なお、㋑各期間の初日の30日前に各期間における労働日及び労働日ごとの労働時間を労働者代表等の同意を得て書面で定める必要があります。

4.所轄労働基準監督署への届出

 1年単位の変形労働時間制に関する労使協定を締結した場合は、様式第4号により所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。


以上の通り、1年単位の変形労働時間制は、変形労働時間制の中でも、かなり規制の多い制度と言えます。
上記以外にもここでは記載しきれない規制がありますので、実際の導入の際には十分要件を確認されることをお勧めします。

また、規制が多いということは、それだけ過酷な労働条件になりやすい制度とも言えます。
導入の際には、運用を含めて充分な検討が必要ということだと思います。


 

労働契約法第18条(有期雇用契約の無期転換規定)の特例法成立

「アベノミクス解散」で多くの法案が廃案になる中、春の通常国会から審議が継続していた労働契約法の特例法が成立し、さっそく公布されました。

労働契約法第18条では、「同一の労働者との間で有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合は、労働者の申込により、無期労働契約に転換できる。」と規定されています。
これは、二つ以上の有期労働契約が更新されて、通算5年を超えた場合、労働者が希望すれば(申し込めば)、無期労働契約に転換しなければならないことを義務付けています。

例えば60歳で定年を迎えた労働者を嘱託再雇用し、1年毎の有期労働契約で更新を続け、65歳に到達したとします。
この労働者が優秀であるため更に雇用継続した場合でも、この労働契約法第18条の5年超の規定が適用されることになり、無期労働契約になる可能性が発生するわけです。

このようなケースでは、この労働者は60歳の定年も既に経過し、65歳までの再雇用期間も経過することとなり、実質的に定年の規定が適用されないこととなります

上記の例を踏まえた上で、今回の「特例法」の内容を解説したいと思います。

【特例法の主な内容】

①特例の対象者

 Ⅰ)「5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務」に就く高度専門的知識等を有する有期雇用労働者
 Ⅱ) 定年後に有期契約で継続雇用される高齢者

②特例の効果

 特例の対象者について、労働契約法に基づく無期転換申込権発生までの期間(現行5年)を延長
  →次の期間は、無期転換申込権が発生しないこととする
   上記①-Ⅰの者: 一定の期間内に完了することが予定されている業務に就く期間(上限:10年)
   上記①-Ⅱの者: 定年後引き続き雇用されている期間

※特例の適用に当たり、事業主は、
   上記①-Ⅰの者について、労働者が自らの能力の維持向上を図る機会の付与等
   上記①-Ⅱの者について、労働者に対する配置、職務及び職場環境に関する配慮等
  の適切な雇用管理を実施することとしている。

【特例法の施行期日】 平成27年4月1日(予定)

【無期転換ルールの特例の仕組み】

①事業主による計画の作成・・・・対象労働者に応じた適切な雇用管理に関する事項を計画として策定する

②申請・・・厚生労働大臣に雇用管理計画を申請する

③認定・・・基本指針に沿った対応が取られると認められれば認定される

④有期労働契約の締結・・・高度専門労働者や定年後引き続いて雇用さる者と有期契約を締結

⑤無期転換ルールの特例適用
 Ⅰ:高度専門労働者・・・プロジェクトの期間中は、対象労働者について無期転換申込権は発生しない(ただし10年を上限)
 Ⅱ:定年後引き続いて雇用される者・・・定年後引き続いて雇用されている期間中は、対象労働者について無期転換申込権は発生しない

※なお、雇用管理に関する計画の申請の方法については、まだ具体的な方法が明示されていませんが、近々明らかになっていくものと思われます。

この臨時国会では、上記のような内容で特例法が成立しました。
上記の例は、特例法ではⅡのケースにあたりますが、多くの企業が採用している再雇用制度ですので、今後、特例法を適用するための計画申請のニーズが高まるものと予想されます。

「マクロ経済スライド」が初めて発動されます。

平成27年度、遂に「マクロ経済スライド」が発動されることになりそうです。
平成16年の法律成立から10年を経過して初めて適用されます。

マクロ経済スライドとは、公的年金の支給額の伸びを物価上昇よりも低く抑える仕組みですが、これまでの10年間適用されなかったのは、デフレ下において物価が上昇しない状況が続いていたのが原因です。
この程、平成26年度の通年での物価上昇が決定的となったことに伴い、マクロ経済スライドの発動が確実となったようです。

それでは、マクロ経済スライドとはどのような仕組みなのか、簡単にご紹介したいと思います。

この法改正は、平成16年に行われましたが、それまでの制度では、将来の保険料の見通しをにより、給付水準と当面の保険料負担をその都度法律により、決定していました。
しかし、少子高齢化が進むことにより、保険料水準の見通しは確実に上がり続けることとなり、国民の保険料負担がどこまで上昇するのかという懸念がありました。
 

そこで、この法改正で、将来の保険料負担が大きくなりすぎないよう、保険料水準の上限を設定し、そこまでの毎年度の保険料水準を法律で定めました。(平成29年までの保険料水準の上昇額が決定されたのがこれにあたります。)
同時に、国の負担割合(税額の投入割合)の引き上げと年金積立金の活用により、公的年金財政の収入額(税金と保険料等)を固定しました。

これにより、公的年の収入額が決定されたことにより、この収入の範囲内で給付を行うことが必要となり、「現役世代人口の変化」と「平均余命の伸びに伴う給付費の増加」というマクロでみた給付と負担の変動に応じて、給付水準を自動的に調整する仕組みを導入したのです。

この仕組みを「マクロ経済スライド」といいます。

①基本的な考え方
元来、公的年金額は、賃金や物価が上昇すると増加することを予定していましたが、一定期間(調整期間)中は、賃金や物価が上昇しても年金額はそれほどは増加させないことで、公的年金の財源の範囲内で給付を行い、長期的に公的年金の財政運営を維持していくことを基本しています。


②調整期間における年金額の調整の具体的な仕組み

調整期間中は、賃金や物価による年金額の伸びから、「スライド調整率」を差し引いて年金額を改定します。
「スライド調整率」は、「公的年金全体の被保険者の減少率の実績」と「平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)」で計算されます。
スライド調整率
③名目下限の設定
マクロ経済スライドによる調整は「名目額」を下回らない範囲で行うことになっています。

名目下限の設定の仕組みは下記の通りです。
マクロ経済スライドの下限
 

④調整期間中の所得代替率

マクロ経済スライドによる調整期間の間は、所得代替率(現役世代の所得額と年金による収入保障の代替率)は低下していきますが、調整期間が終了すると、所得代替率は原則一定となります。

マクロ経済スライドの自動調整と所得代替率
 
以上が「マクロ経済スライド」の仕組みになります。

来年度以降、財政検証期間の5年間は調整期間が続くこととなり、物価が上昇しても給付額は低く抑えられることとなることが予想されます。
物価が上昇する局面で、さらに消費税の増税等が予定されており、年金生活者の生活を圧迫することになるのではないかと懸念されるところです。

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